ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

戦争と農業

 

戦争と農業 (インターナショナル新書)

戦争と農業 (インターナショナル新書)

 

ネットで『トラクターの世界史』が面白いという話を聞いて買おうとしたんだけど、なんか知らんけど間違えてこっちの本を買っていた。読み始めるまで気付かなかった。迂闊。でまあ結果から言うと大失敗。俺が読みたかった本とは全く違っていて、読みながら延々毒づき続ける結果となった。

前半はまあ色々留保ありながらも面白いんですよ。「トラクターが国家にどのように利用され、戦争で戦車となったか」みたいな俺の一番興味を持っていた点が簡単に触れられているし、「ハーバー・ボッシュ法」が出てきたときはキターって感じ。なるほど農業と戦争をこういう切り口から語ることができるんだなーと感心する。あと食の問題を取り上げて、兵站から戦争に触れるのもちょっと面白かった。

問題は後半の「人間は効率第一主義をやめるべきだ」的な展開で、冒頭の「仕組み」論からそうなんですけど、この著者がなんかこう農業を通じて今の社会のあり方に疑問を投げかけようとしているのはわかる。ネイチャーな思考で人間らしさを取り戻そう的な発想に浸かっていても個人の自由だと思う。突然ベ平連とか出てきてもあーうんそういうのに共感を持つ人なのね、とかいう感じで対距離を置くだけで。

でもさあ、人間社会が効率を上げるという仕組みの魔力、というかどうしようもない圧力によってこのような形をとっているのに、それに対抗する具体的な手段が「人間を食のサイクルの中に存在する一本のチューブと考える」とかちょっと頭がお花畑過ぎませんか? ひとりがそういう考え方で蒙を啓いちゃうのは勝手にやってくれって感じだけれども、そんな中学生でも考えつきそうなレベルの発想の転換で今まで人間が(善し悪しはともかく)創り出してきた社会の仕組みが変わるなんて到底想像できない。なぜ効率を追い求める社会が害を孕んでいてそれを憎むのは分かるけど、憎しみばかりが先行して効率がもたらす益をあまりにも軽視しているように思われる。少なくとも俺はこれっぽっちも説得力を感じないし、こんな話を聞くためにこの本読み始めたんじゃないんだけどなあ……。