ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

生ポアニキ

 

生ポアニキ (オーバーラップ文庫)

生ポアニキ (オーバーラップ文庫)

 

この作者の小説はずいぶん読んでなかったんだけど、いやーさすがベテランうめーわ。うめー。タイトルからもわかるように完璧色物枠として見せつつも主人公のビルドゥングスロマンになっていてその構造が超強固で、色んな人のシリアスドラマを垣間見せつつモブライクなサブキャラも巻き込んで成長させちゃってという、安心安全楽しんで読める内容となっております。おもしろい。

なににつけてもアニキの描写が素晴らしく、いやまあもちろんなんでか知らないけど筋トレに巻き込まれて日常の鬱屈を昇華させることに説得力を持たせることに成功させちゃっている地の文の力も素晴らしいのだけれども、それはどう考えてもアニキのキャラクターがあるから成立するのだった。ネットジャーゴンがバックグラウンド。基本に忠実。アイディア豊富。キャラ付けは揺るがず徹底。途中できちんと人間としての弱みを見せる。いやー、グレイト。

あと普通に上手いのが解明の焦らしというか、「え? え? なんでそれに突っ込まないの?」と疑問を抱かせながらも強引に物語を進める手管だよね。まあここまでわざとらしくやられると笑っちゃうけど、でもこの主人公とアニキのキャラがそれをちゃんと成立させちゃってるもんなあ。

あと食べ物描写は謎。いや全然謎でもなくて、テーマ的にはまあ周辺にこういう知識は必須だよねという分野ではあるんだけど、でも明らかに小説の内容からはみ出した描写がなされていてつい笑ってしまう。とても良い。