ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

約束された場所で―underground 2

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

最初の対談がとにかくスリリングで、前作では聞き手に徹していたが今回は違う、という冒頭の断り書きが正しく全面に出ている。作家としての村上春樹が物語をどのように捉え、彼らが信じた「ジャンク」な物語とどのように向き合おうとしたのかが、朧気ながらもわかる感じ。
「悪」の概念に対しての思索を深めているのも大変面白い。物語が不可避的に悪を必要とし、その制御が効かなくなる場合すらある……という考え方は、実は今こそ参照されるべきなのかもしれない。

ところであとがきに突然「満州」という単語が出てきて驚いてしまった。戦後日本を考える時に、その対比として戦前日本の帝国主義とその知的バックグラウンドについて考えなければならないなあと漠然と感じ、その辺りの書籍をぽつぽつ読み始めていたところだった。
村上春樹満州で描かれていた物語とオウムで騙られた物語を類比関係にあるとして捉えているようだが、今の自分はそれらが同質のものとは思えず、むしろそういったイデオロギーへの拒絶こそ、人々が物語に対して適切な距離をとる努力を放棄させてしまい、オウムのような事件を招いたのではないかと感じられた。
が、まあそれは今の実感で、もう少し色々書籍を当たってみないとわからないかも。