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ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

フィクション・ブレイカーズ

 

フィクション・ブレイカーズ (GA文庫)

フィクション・ブレイカーズ (GA文庫)

 

フィクションに取り込まれた患者を救い出すというメタなラノベ

短いスパンで共通認識を使って世界をサクッと設定した後、ちょっと意外性のある患者の背景を描いてお話として回収する、というのはまあそこそこちゃんとしていて思ったより全然安心してみていられる。

のだけれども、根本的にはちょっと厳しい話だよなーコレ。作中作で「以下にも出来の悪い」世界を想像する以上、その周りを取り囲む現実やまた現実からフィクションに囚われた患者は、全く異なったレイヤーの物理法則の下に描かれなければならない。でもたった数十ページの短編で患者を描こうとすれば、その行動原理は戯画化されざるをえず、作中作の「いかにも出来の悪い」存在へと肉薄していき、また患者を治療しようとする主人公の行動も「いかにも出来の悪い」フィクションへと接近していくという……現実世界のヒロインのだいたいツンデレな行動にリアリティを持たせるために、作中作内に出てくるキャラクターはもうベッタベタにベタなツンデレとしか描けない――というのでは、物語全体が貧しくなりそうな気がする。むしろ現実側の、テンプレ展開に囚われないリアリティをきちんと描くことが必要で、しかしそこはそんなに意図した書き分けがされているようには思えないんだよなあ。

あとこれってさ、単純にスクリプトドクターの話にすれば良かったんじゃない? とも思う。現状主人公の勝利条件が微妙すぎる。素人の書いたどこか欠点があってピリオドを打つことの出来ないフィクションに潜入し、物語的な欠落を主人公が埋めることで、患者がいったい何を求めていたのかがわかり治療が完了する……というような形式に固定しちゃった方が、主人公の行動原理に共感を持ちやすく良いんじゃないかなあ。現状の「フィクションをブレイクする」というタイトルの立ち位置は、フィクションが紛い物であるという含意があって、この小説そのものが持つ説得力をメタ的に落としてしまっている感じがします。

あと主人公の一番重いエピソードをふたつ目に持ってきたのも結構コントロールが危ういなあと感じる。あれってせめて一巻のラストで語られるべきエピソードじゃないのかなあ。ひとつひとつのエピソードはまあそこそこ悪くないのだけれども、全体の構成とか俯瞰視点の意味づけがバランスを欠いているような、そんな感じ。

他にもまあ、組織がふたりを育てる話を描いているのに、主人公の「目の前の患者を救いたい」という動機が物語内で圧倒的に正当化されすぎて、組織側からの反駁の余地がないのは結構厳しい。主人公は主人公なりに正義を貫き何かを達成するが、しかしそれにきちんとカウンターを打つ組織の論理に正当性の余地を残しておかないと、この設定じゃバランス悪いよなー。現状組織からの反駁が単なる罰になっていて、「組織ってやだなー」という印象しか与えないのは、いやもしかしたら意図したモノかもしれないけど、それだったらちょっと組織の存在を軽視させすぎていると思う。そういう意味では、ヒロインが主人公に対抗する論理をきちんと構築できていないアンバランスさが惜しいのかもなあ。いやー、だって主人公がフィクションに感情移入しすぎるのは正直言って気持ち悪いじゃないですか。あれ失敗のリスクを正当に評価して、それでもなお、主人公が踏み込まなきゃならない動機をきちんと描くべきだと思うんだけど、失敗のリスクが最初からスコンと抜けてるんだもん。そういうリアリティで組織の話を後ろに敷こうとしたって、そりゃ片手落ちじゃないかなあ。