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ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ネット私刑

 

ネット私刑(リンチ) (扶桑社新書)

ネット私刑(リンチ) (扶桑社新書)

 

被害者にしか書けないことと被害者であるから書けないことがある。この本は著者がネット上で誹謗中傷を受けている立場だから、明らかに冷静さを欠いている部分が多々あると感じた。学校で受けたイジメの下りを入れてくるあたりは、たぶん作者にとっては必要なエピソードだったのかもしれないけれども、ちょっと感情的になりすぎてて問題の焦点をぼかしているよなあ、と思う。

被害を受けている立場上、ネット上でなぜ私刑が行われているかの考察も、ちょっとリアルの思考に依りすぎているように感じる。もちろん実際に面と向かって対話をする現実の人間の様子というのはこの作者にしか書けないことなので、なるほどそういう人が書いてるんだなあと興味深く読んだが、しかし一方でネット上で情報を得た人々がどのような経緯を経て赤の他人に対する誹謗中傷を行うのか、というような部分の考察は足りていない。解説されているのは、多少リテラシーがあれば肌感覚で当然わかってるようなことばかりだ。もうちょっと第三者的な立場から、どのようなメカニズムでネット上の悪意は増幅されていくのか、というような分析が読みたかったなあ。

もちろん、「被害者にしか書けないこと」の部分はさすがに面白く、警察がどのように対処するのかだとか、スマイリーキクチが冤罪をかけられている経緯だとか、大変説得力がある。あるんだけど、やっぱりそれも被害者としてのバイアスがかからざるを得ないよなあ。ちょっと難しい本でした。