ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

君の名は。

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なんかTwitterリンクを入れるとカードで冒頭の文字を引用してネタバレが目に入ってしまうのでここら辺の文字を適当に増やす。というか「記事の概要」項目いじればいいの? そうなの?

ということで以下ネタバレありの感想。

 

もうこれは新海誠におけるストーリーの発見に尽きるのではないか。今まですれ違うふたりの男女の恋愛を描き続けてきた監督が、「生と死」を軸に物語を展開するにあたり、「過去と未来」を重ねがけするという策略と、そこから生まれる過去改変での解決は、構造的にはそんなに飛躍した発想ではない……とか、書きはじめて思ったんだけど。

これってもしかして入れ替わりってアイディアの方が後付けじゃね? 男女のすれ違いをベースとして考えたとき、『愛の手紙』とか『オーロラの彼方へ』的な「過去との通信」型のストーリーでもふたりのすれ違いは演出できるよね? いやまあもちろん完成したストーリーは入れ替わりが不可欠な要素になってるけど、ある意味それは賑やかしにしか過ぎない……とまで言ったら言い過ぎか。
いやしかしなー、そうやって考えると俺の「なんかふたりの恋愛に切実さが感じられないんだよなー」という俺の実感も結構クリティカルな感じがするというか。序盤では時間の差が伏せられているのだから、「入れ替わり」という要素のみがふたりの特別な恋愛感情の根拠とならなければいけない。「都会/田舎」「男/女」の入れ替わりと価値観の交換が、きちんとふたりの恋愛感情に繋がるからこそ、後半の展開が生きる構造になる、はず。ところが自分はどうもふたりの間に芽生える恋愛感情に、共感が持てず悔しかったんだよなあ。まあそこは新海誠の「カットバックを挟みながら語られる省略された時間のダイジェスト」が担保するべき部分で、するってーと自分が「省略」された時間に「恋愛感情の芽生え」を読み落としていた、コッチ側の問題、かもしれないけれど。

まあともかくストーリーの発見の話。いやホント、とにかくあの後半のスペシャルな異界から逆算してちゃんと序盤からハクをつけるという技術的な要件をクリアしていて、もう酒のエピソードまでちゃんと用いて後半への準備をしていたのは「えらい!」の一言。かなり丁寧よねアレ。ま、御神体の位置を湖の真ん中などには置かず、クレーターをふたつ用意してしまう辺りは混乱してるんじゃないかなーとかは思うけど。


あと何はともあれラストは踏切じゃなくてよかったなあ。もうねー前後の扉の断ち切りカットとか月電線カットとかが出るたびに「うおーかんべんしてくれー」と思ったもんね。正直あそこで階段が出てくるのはストーリーからいえば「え? なんで?」と思わなくもないけれども、もう少し象徴的なレベルで言えば、やっぱり正解だろうなあと思う。あの階段登るの大変だったんだよきっと。あ、でもストーリー的に言うとラストで結ばれないとなぜあの男主人公と女主人公が入れ替わったのか、という疑問への明確な回答がなくなってしまうので、ふたりはそもそも縁で結ばれていた、と解釈するのが現実的かぁ。
他にも嬉しかったのは「笑い」がたくさんあったことだよなあ。それは周囲の人間をきちんと配置して、それぞれの役割をうまく宛がうことができたということでもあると思う。今までなかなか生まれなかったからなー笑い。

他にはファーストカットの被写界深度の浅さがクソ浅くて正気かと思った。あれは全体の表現の宣言だと思うけど、いやしかしですねテクスチャが存在しない肌の表面にボケを入れるとかちょっと正気じゃないっすよ。他のカットもちょこちょこ極浅の被写界深度カットあったのが、序盤は目についたけど後半気になんなかったなー。成立してんだろうなーアレ。
あと新海監督の日本家屋の描き方も大変堪能しました。やっぱさー、居間茶の間床の間ぶち抜き的な構造は描きたくなるよねー。ちゃんと切り返しで書いてあって俺は大満足だよ。90度ずつのカメラも超印象的。ローアングルでよろし。

 

と、散々書いてきたけど俺はやっぱり新海監督の演出は信用できねーなーとも思っている。正直今の作品で「なぜ街がこのように描かれなければならないのか?」みたいなストーリー構造を踏まえた演出のコントロールは足りない気がするんだよなあ。『君の名は。』で言えば「都会/田舎」の対比はどのような意図の下で行われるべきか、みたいな。
クライマックスにもほんの少し物足りなさがあって、いやそれはちゃんと描けてるしきちんとクライマックスだし何ら問題はないのだけど、それは画だの状況だので創る展開であって、そこにもう少し全体の構造から導かれるサムシングがあるといいなあ、みたいなのは思っている。『ほしのこえ』のあのラストは少女の思いが時間も空間も物語も整合性も一足飛びに置き去りにしてダダ漏れポエムとして表現される、その演出が美しいわけじゃん? この監督の武器は言葉も音楽も映像も使って全力で殴りに行くポエムであると思っているので、クライマックスで演出が物語を一気に飛び越して作品を昇華させるような、そういうのが見たいんですよ。一番大事なところはそういう演出であって欲しいんですよ。(あ、だから『秒速5センチメートル』の山崎まさよしPV素材収集映画な構成はその巧拙はともかく好きです)