ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ―

 

この小説でラノベを煽りたくなる気持ちもよくわかる。この本の挿絵に「うおおおおおおおお懐かしいいいいいいいい」となってしまったのは最近のラノベの物語からキャラへの偏重の証でそういう現状はマズいよね。

いやまあ真摯なデキだと思います。異世界を構築して「言血」というキーワードから剣の駆け引き他を導く力は大したもんだし、守護やら双子トリックやらのギミックを余すことなく使って物語を紡ぐその姿勢は好感が持てるなあと思う。

でもさ、やっぱりお話自体はそんなにうまく語られてないと思うんだよねコレ。

序盤早々主人公たちが置かれる立ち位置にあまり説得力がなく「もっと彼らに明確な目標与えてやった方がいいんじゃないの?」と思っちゃうところとか、世界観についてちょっと抽象的で香り立つような土着固有の描写がちょいと薄目の所とか、欲しいところで欲しい説明が微妙に足りていない感じ。

 

何より問題なのは、あー、ネタバレになるけれど、この話の根幹である「ヒロインの死」に説得力が足りてないところじゃないかなあ。いやまあ、そういう構造で物語を構築していて、それをシンプルに描くその心意気自体は悪くないと思うんだよ。でも、「なんでこのヒロインがこのアクシデントで命を失わなければならなかったの?」「普通の小説だったらここで主人公ががんばってヒロインを救うこと可能だよね?」という感覚を追い払うことができないっていうか。

結局さ、作者ってヒロインを生かすも殺すも自由なワケですよ。理屈だけ言えば一行「その時心臓発作で太郎は死んだ」と書けば太郎を殺すことができるわけで。だから重要なのは「作者がいかに読者を説得するか」「納得のできる形でお話を進めるか」ってトコロで、ヒロインを殺す展開に同意を得させるためにはそりゃあ大変な手続きがいるわけです。例えば「ヒロインの難病をあらかじめ明言しておく」とか「ヒロインが死ぬ定めであることをあらかじめ占わせておく」とか「ヒロインを殺すため専用の武器を用意しておく」とか、そんなの。別に「不条理に人が死ぬ世界である」というリアリティの導入でも良いかもしれないけれど。

まあともかく、そういう「読者に納得させるための手続き」がうまく機能しているようには感じられず、自分には「読者の語りたい物語のためにヒロインを殺す」という展開になっているように思え、その語り口はちょっと粗雑なものに思えました。