ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った

15人のキャラクターをどうやって捌くの? と思ったら、ああなるほど、こういう方法があるのね……と膝を打つ。

普通多人数視点の群像劇っていうと、個別に様々なストーリーがあって、それが途中ですれ違ったり絡み合ったりして全体のストーリーが進んでいく……という形を想定しがちだ。
でもこの話は最初から個別のストーリーが全体のストーリーの一部を成している。たぶんそれがこの読みやすさに繋がっているんだけれども、それでも様々なキャラクターが「群像劇」として動いているように見えるのは、個別のストーリーを繋ぐものが「メール」であるからだ。
で、たぶん、メールが起点になる推理的要素を含んだストーリーを表現するには、小説ってかなり良い媒体なんじゃないかなあ、と思った。

さらにいうならこの1巻のストーリーは他の表現媒体では表現が難しいような展開が多いように感じた。たとえば初登場でいきなり「このメールは神の啓示!」なんて、見ず知らずの人間を助けようとする展開は、細やかな心理描写ができる小説だからこそできることで、アレを映像とかでやろうとしたらちょっと困るんじゃないかなあ。


以下雑感。
・見ず知らずの人間の命を助ける! というテーマがしつこいくらいに反復されていて、いやあ、真摯だなあと思う。
・なんにせよ信頼できる書き手だなあ……
・横の繋がりだけで縦の繋がりが見えないのは意図的なのか。
・あとがきの自信に打ちのめされる。っつーかあとがきが一番ショックだったわ。普通は言えないよ、アレ。
・とはいえ、地味っていうのは頷けるところで、まあこれがライトノベルというジャンルで売れるのはちょっと難しいよなあ、と思う。ハードカバーだったらまた違うかもしれないけど……。もちろんそれぞれの登場人物が魅力を持っているのは間違いないが、しかし作品全体を代表する「キャラクター」がいないと、今のライトノベルで売れるのって難しい気がする。