ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

理の守護神さま。一.黒使の少女・龍方時雨

あとがきまで読んで「ああ、作者は本当に設定を創るのが楽しいんだろうなあ」と思った。
「作中には書いていませんが、実はここにはこういう設定がありまして……」なんて言われても、その設定の奥深さが作品の面白さに繋がっていなければ「ああ、そうですか」で終わってしまう。
その設定が、それ単体で興味を引くくらい特殊で興味深い造りをしているのならともかく、作者が自ら認める「よくあるファンタジー設定」をいくら並べられたところで、読者は全然喜ばない。


作品全体が読者の方向を向いていない印象を受けたのだが、それが最も端的に表れているのはキャラクターの配置だろう。
ほとんどのライトノベルの主人公がティーンズに設定されているのには間違いなく意味があって、その設定を覆すならそれなりの説得力が必要だ。「ティーンズの主人公」という特権的な感情移入の対象をあえておかず、二人の悪女の対立を軸に物語を駆動させるなら、作品全体で両者の主張の相容れなさを描く必要がある。

たとえば「このキャラクターはなぜ戦わなければならないのか?」をはっきり読者に示すだけで、物語はグッと読者に近づくはずなんだけどなあ。


まあしかしこの作者の場合、設定の魅力・練度・効果を高めることが、読者にとっても作者にとっても幸せな結果に繋がるような気はする。