ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

生きものの記録

 

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何この力業?

「原爆」にリアリティがないのはおそらく自分の世代の宿命で、老人の動機に共感できないのは仕方ないだろう。
だが、それでもあの老人の狂気じみた行動に感情移入をさせられてしまったのは、「土下座」のシーンがあまりにも心を打ったからだった。あのシーン以前と以後で、物語には大きな外的な変化がない。「やれやれこのじいさんみんなを呼び出して、また一緒に来いとか怒鳴りつけるのか」と思ったら土下座である。それまで全く「原爆」という動機に共感できなかった自分も、血族への愛情ははっきりと共感できた。老人を駆り立てていたのは、狂気と紙一重の愛情だったのだ。それを理解した瞬間、それまで全く共感できなかった老人への同情が、一気に湧き出した。まったく、アレが力業じゃなくてなんだってんだ。
深すぎる愛情はやがて狂気となり、老人は精神病棟へと入る。映画は血族とそれ以外の愛情の差異をくっきりと浮き彫りにしながら、終幕を迎える。

ああ、恐るべし橋本忍! この脚本から滲み出る情念! そしてそれを最大限発揮できるように設計された全体の構成!