ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

つきこい

つきこい (電撃文庫 や 5-4)
山科 千晶
メディアワークス (2007/11)
売り上げランキング: 144090
おすすめ度の平均: 4.0
4 よかった。


連作短編。満月の夜に人を待つOLに恋をしたギター少年の話と、そのOLイズミが学生だった頃「トキ」という少年に出会った話。
女性の感性で書かれた作品だと感じた。物語が男性的な感情曲線を拒否して語られている。初めての告白を回想形式で描く感覚。盗作がばれた辺りの主人公のドラマの素っ気なさ。この作品で自分が一番ドラマティックに感じたのは、女友達に告白のきっかけを作るべく突然手渡されたアイスクリームだった。クライマックスを目指すような作品ではないが、それはそれでひとつの味になっていると思う。
しかしキャラはもう少し踏み込めなかったか。多少漫画的でも良いので、各キャラクターならではのエピソードが欲しい。
時系列の入れ替えが効果を発揮しているようには思えなかった。かぐや姫に重ねられたイズミの神秘性が徐々に剥がれていくような構造で、ラスト近くで避妊に関わる物事が語られるのはライトノベル上ではショッキングだとは思うが、しかし翻って冒頭のボーイ・ミーツ・ガールを鑑みたとき、そこに一貫した仕掛けが感じられない。
トキのおかげで、イズミが男性への嫌悪感から立ち直り、そのおかげでギター野郎と結婚し、少女が生まれ、その少女がトキと出会う――というような構造であるのなら、もっとその因果を強調した描き方ができるのではないか。