ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

パピヨン

 

パピヨン [Blu-ray]

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スティーブ・マックイーンはそんなに見てないんだけど突然連発してしまった。

長尺だけどそれを感じさせないド迫力だなあ。マックイーンが言葉少なに耐え忍ぶのを延々追体験するのだけど、最初の脱走失敗パートの監禁ですでに圧倒されっぱなし。真っ暗闇で時間の経過もわからないまま這いずる虫を食って生き延びるその凄みたるや……扉から首を出すエピソードとか、小技も劇的に効いてるよなあ。二度目の脱走で捕まったときは「あれ以上どうやって見せるんだよ!」と思ったけど、一気に時間飛ばしちゃうのはさすがの編集。いやー、唸らされますね。

にしても二度目の脱走劇の途中であった謎の原住民とのふれあいは何だったんだろう。なんでこんな優しくしてもらえるの? と思ったら刺青が理由だ、という展開を台詞ゼロのダイジェストでわからせてしまうのは凄まじい。

海に飛び出して自由だ! と叫ぶラストは、もうこれ以上ないくらい真っ当な結末で、うーんぐうの音も出ませんね。

ところで舞台がどこだかよくわからなくて混乱したんだけど、フランス領ギアナってあのギアナ高地のギアナか。よく考えたらフランスの打ち上げってギアナ宇宙センターだよな。いやあ納得納得。

新宿鮫6 氷舞

 

氷舞 新装版: 新宿鮫6 (光文社文庫)

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うーんおもちろーい!

毎回様々なアングルから楽しませてくれるこのシリーズですが、やっぱり組織の陰謀が絡んでくる展開が一番楽しいかなあ。新宿で組織の出世コースから外れて切り札保って一匹狼やってる警察官が主人公なんだから、キャラクター性としてもそういう押し引きがドラマティックになるのは道理だよねえ。しかも今回はそれに比べて「ライバルとの共闘」「運命の女の登場」という二大おいしいネタが贅沢にどがーん! とブチ込まれていて、これで面白くないわけないでしょーというデキ。

途中で違った道を選んだライバル刑事との軋轢や文化的ギャップで物語を展開するのは大変興味を惹く構造で、カラオケボックスの下りとかホントうまいなーって感心してしまう。このシリーズ、終始警察組織とキャリアの説明って側面があるわけで、知的な欲求を視線の高さの違いを活かしてほんとうまいこと織り込んでるよなあ。

まーしかしこの感での白眉はやっぱりゲストヒロインの登場か。芸術表現って下駄を履かせて、あんな短い分量で男女が惹かれあってしまうところに説得力を持たせちゃうんだから、いやーほんと上手いよなあ。立場とストーリー運び上、序盤でなんとなーく裏があって主人公の信頼を裏切る格好で離れるキャラクターだなあ、というのはわかるんだけど、突然「平行な線」みたいな比喩をブチ込んでふたりの関係をあそこまで昇華指せちゃうのはマジでビビった。いやー面白いなー新宿鮫。

マラヴィータ

 

マラヴィータ スペシャル・プライス [Blu-ray]

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「うーんこのシチュエーションならなんの映画流すだろう? グッドフェローズあたりかなー」と思ったらホントにそのチョイスで笑った。

豪華俳優が共演の映画だけど、リュック・ベッソンの気の抜いた映画って感じ。どうも前半の説明パートから展開が遅くて、小気味よくテンポ良く家族のキャラを立てなきゃならないはずなのに編集がダルくて見てられない。っていうかあのいかにも勢いつけてやってますって感じの空気を出そうとする音楽の、絶望的なまでのコレじゃない感はなんなの? 基本的にはコメディで、ストーリーらしいストーリーがあるわけでもない話なのは分かってるんだけど、それにしたって中盤までの興味の持ちどころが見つけづらい作品よねえ。新聞が渡っちゃうパートのミラクル感とか、もっとわざとらしい演出でズギャッとやらなきゃならん作品なんじゃないかしら。素直に笑えたのは映画のシーンくらいだよなあ、というのを考えると、全体通してあのくらいブッ飛んだ画面をつくらなければならないのかも。

ラストの襲撃から銃撃戦のパートも全く締まらないというか、プロのプロたる所以も見せずかといって子供達の活躍も中途半端で、オマケにあのトミー・リー・ジョーンズの締めでしょ? うーん、なんだかなあ……

ザ・ウォーク

 

ザ・ウォーク [SPE BEST] [Blu-ray]

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んー、『マン・オン・ワイヤー』を事前に見ていて、そっちの方はドキュメンタリーの説得力とそこから生み出されたワンダーに大変感動したので、どうもこっちの映画は作意が強くてなあ……この出来事って、ふたつのビルの間にワイヤーをかけてその上を歩く、ただそれだけのアイディアでそれまでの世界が全く違って見える、というのがポイントだったわけで。それをこういういかにも「次々に襲い来る困難をクリアしました」なエンターテインメントに仕上げられると、うーん、そういう「お話」にしちゃったのね、という印象が強い。このジャケットのいかにもって感じの見下ろしアングルもそうだけど、渡りはじめるところの超嘘くさい空の美術とか、ちょっとドラマティックに描きすぎじゃない? という感じ。

あと突然街がどーだこーだとかナレーションで言い出したときはすげー引いたなあ。もちろんWTCがその後大変象徴的な役割を果たすことになるのは分かってるんだけれども、それと主人公個人の動機って、全く関連性がないわけじゃないですか? なんで綱渡りをすることでWTCがニューヨーカーに迎え入れられた(そしてそのWTCは今存在しない)みたいな物語を過剰に差し込む必要があるの? それってスクリーンのこちら側で勝手に読み取れば良いもので、ドキュメンタリーテイストの作品にブチ込むと色々台無しに思えるんだけどなあ。

栄光のル・マン

 

栄光のル・マン [Blu-ray]

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なんだこの渋さ。こんな台詞の少ない映画もなかなかないんじゃないか。ってか冒頭の全く何も説明せずにとにかく役者の目力と視線へのズームだけで見せきってしまう演出方針の宣言がヤバイ。どんだけ強気なんだ。

しかしその強気が映画全体に圧倒的な凄みを乗っけてるのは間違いなく、とにかく車車車。車を如何に撮るかどう見せるかにメチャクチャ凝っていて、っていうか基本それだけに全力を注いでいる感じ。いやまあ男女のあれやこれやが一応ドラマとしてくっつけられていて相変わらず言葉少なに顔力で勝負って感じの見せ方でどんだけ直球だよ! と思う。思うけど、やっぱり人間ドラマはワリとどうでもよくて、とにかく車。ホント映画を作った人間は車を見せることばっかり考えてたんだろうなあ。だってこの映画で唯一大きな場面転換が可能な夜のパート、ビックリするほどあっさりしてるもん。普通あそこにもっと大きなイベント起こすでしょ。でもしょうがないよね闇夜じゃ車撮れないもんね。

にしてもスローモーションでの破壊は有無を言わせない説得力があるよなあ。終始画面にブラーかかってまともに捉えられなかった被写体が、ゆっくりと宙を舞うのはどうしたって美しく見えてしまう。ってかあんな速攻で激しく燃えるもんなのか車。

アパートの鍵貸します

 

アパートの鍵貸します [Blu-ray]

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現代でリメイクするんだったら主演ジム・キャリーだよねこれ。ジャック・レモンのちょっと気取った芝居を見る度にその顔面がジム・キャリーの濃い芝居に上書きされて思わず笑ってしまった。

いやまあとにかく面白い映画だなあ。「アパートの鍵を貸す」ってメインのアイディア自体はそこまで面白味があるわけじゃないじゃないですか。こういう当たり前のことがらを最小限の人物で真っ当にストーリー仕立てにしてしかも面白いというのは、うーん、すごいなあと唸るしかない。キャラクターの説得力が素晴らしくて、特に主人公は後半になるにつれておいおいすげーなって立て方になってて感動。電話盗聴からのリークとか意外な展開も決まってるし、割れ鏡やカードのエピソードとか「あ、それでストーリーを転換させるんだ」って小道具も最高に良く機能してる。あとはなんつってもその人間臭さもコミコミでヒロインの説得力がたまんねー。巨匠とかあんまりありがたがってもしょーがないとはおもうんだけど、いややっぱりすごいなあビリー・ワイルダー。

あと「蛍の光」は最近見た『哀愁』を否応なしに思い出しますねコレ。

エネミー・オブ・アメリカ

 

エネミー・オブ・アメリカ [Blu-ray]

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とにかくラストが良いですね。そこまで翻弄されっぱなしだった主人公が、絶体絶命の危機を機転を利かせて乗り越えるという展開を、遙か遠くに忘れていた冒頭の意味ありげな伏線を使って解決しちゃうという。ジーン・ハックマンが外に出てFBIが気づく下りとか、ウィル・スミスが怯えて生き残っちゃうとか、細かな所なツッコミどころはまあどーでもいいやと思えてしまうくらい。まあとにかくラストで「おーっ」となった映画。

にしても『エネミー・オブ・アメリカ』ってタイトルと大仰なエンタメ内容を見るとリアリティのズレに愕然とするよね。テロが起こった後の世界で見返すとちょっとアメリカ政府の危険性をドラマティックに描きすぎというか、善悪がハッキリしすぎて嘘くさいというか。

まあ、1998年にNSAメインに安全保障と個人のプライバシーの侵害というテーマをやっている時点で「先見の明があるなあ」と素直に感心しておくべきトコか。ちょっとやり過ぎじゃない? という善悪の切り分けを、ウィル・スミスのエンタメアクション力でドーン! オマケにジーン・ハックマンの説得力でバーン! とごまかす映画ではあるし、それが成功しているように思えるしなあ。