ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

危険なプロット

 

危険なプロット(字幕版)

危険なプロット(字幕版)

 

あら素敵。メタというか作中劇というか、虚実を織り交ぜた作品でありますが、編集の妙もあって映像作品としてすごく見せる内容になっていて良いです。冷静になってみるとそんなに劇的なプロットでもないかなーとは思うけど、作品内に視点が取り込まれるだけでかなり奇妙に見入ってしまう感じ。

一方物語の物語でもあるわけで、教師と教え子がぶつけ合う物語観はとてもエキサイティング。現在進行形で紡がれることもあって、現実がどれだけ物語に影響を受けていくか、あるいはむしろ現実そのものが物語であるかという思索が、虚構と現実をフラフラさまよい歩きながら進んでいくのが大変面白い。ここら辺は巧みだよなあ。

そこら辺も鑑みるに後半の展開もなかなか良くて、辺にメタで虚実を曖昧にするのではなく、視点者に舞台を移してむしろ確実性を増した展開が襲ってくるのはとても新鮮。それまでわりとどうでもよかったドラマが新たな光を浴びて伏線じみて見えてくるのはとても良かった。ラストショットもメチャクチャ印象に残る映像で、うーん本当に視点者にこだわる作品だなあ、と好印象でございました。

ターザン:REBORN

 

ターザン:REBORN [Blu-ray]

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そもそもなんでターザンを今リボーンさせる必要があるのか。ターザンって何が面白いのか。あーああーってジャングルを蔓で飛ぶところをCGにして見せたところでまあたかがしれてるし、えーと、ゴリラ? 「ドラミングはパー!」とゴリラ警察が出動しちゃいそうな昨今ではございますが、しかし大量のゴリラVS未開のアフリカ民族されても、それ面白い? ホントに面白いの? オレ、サミュエル・L・ジャクソンがライフルの名手だった方が100倍面白かったんだけど。っつかまたこの人ゴリラと戦ってんのか。コング。コンゴ。

でまあ内容なんですが、プロットは明快だしちゃんとやることはやってるけど普通に面白くない、という映画で見ていて困惑。うーんなんなんだろうこのどうでもよさは。まあ前提としてターザンの魅力の無さというか共感しづらさがマズいのかなあ。改めて考えると、ゴリラに育てられた主人公とヒロインが出会うシーンは異文化交流としてちょっとめんどくさいけど一番面白いところのはずで、そこをカットバックでザザッと流されちゃったのがもったいなかったのかなあ。いやでもそれだけじゃない気もするけどなあ。謎の数珠使いの享受が死ぬところも、いや理屈はわかるし道具立てもいいけど、あの角度で水没するのはちょっと厳しいんじゃないかなあ、と思いました。

パンチドランク ラブ

 

パンチドランク ラブ (字幕版)

パンチドランク ラブ (字幕版)

 

あーすごい。有無を言わせずすごい。だって大抵こういうわけのわかんない映画って「はいわけがわかんないですどーでもいいです」になるわけじゃないですか。ピアノ? オルガン? なんか違う名前だっけ? あんなものを突然ポンと置かれたところで、「あーはいはいアートのアレですねあれ自分興味ありません」とかでスマホ弄り出しちゃったりしません? 僕はよくします。

けど、なんでこんなに吸引されるんだろうなあ。すごいなあ。映画に心地良い謎や欠落があって、回答があるとかないとか関係なく、自分からその中身を読みにいってしまう、というかいかされてしまうこの感じ。何故青いスーツを着るのかわからずプリンを大量に買いキレやすい主人公が一目惚れでハワイまで行っちゃうんだがテレホンセックスの詐欺で袋叩きに遭う。なんなんだこの話。なんでこんなに引き込まれるんだ。謎。謎。とても謎。

単純なエンタメでもなくかといって視聴者を突き放したりもせず、この距離感でこの語り口で作品がつくれるってのは一体何なんだろうなあ。なによりもまず主人公が持つ捉えきれなさと、しかしだからこそ生まれるひとりの人間への共感、みたいなのが話を底から支えていて、だからその人間の恋愛ストーリーには大変心を打たれる、みたいな? そうなのかな? よくわかんないな。不思議。PTAすごい。

アドレナリンドライブ

 

アドレナリンドライブ [DVD]

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矢口監督実は『ハッピーフライト』しか見てないけど面白いんだろうなあきっとと思って見たけどちゃんと面白くて感心した。中盤の恋に落ちるパートの辺りはちょっとたるさもあるけれど、でもこのスケール感でキャラもしっかり立ててこの塩梅で作品を面白くできるのはすごく信頼感あるよなあ。というかザックリ書いてしまうと「ガス爆発事故に偶然居合わせて金を持ち出す」ってただそれだけの話で、奇妙な刺客とか暗殺者とかはおらず、まああえて言えば松重豊はやっぱりさすがにちょっと存在感があるよなーとかそのくらいで、でもこんなに面白く見せられるんだからやっぱりすごいな。すごい。やっぱなんだかんだいっても冒頭のパワハラシーンの吸引力が凄まじかったからなあ。あそこでちゃんと感情掴んだから、その後の展開にのめり込めるんだろうなあ。看護婦側の掴みもちゃんとしてたもんなあ。いやー、すごいなあ。

歌謡曲とかはイマイチピンとこないけど、ハッピーバースデーやら水かけシーンやら、アイディアでグッとこさせてるシーンが多いのがとても良いです。あとはなー、婦長の掛け合いシーンがとても良いよなあ。望遠の背後でカーブしてカットされたあの軽自動車のその後が気になる余韻がとてもいいですね。

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

 

アバウト・タイム~愛おしい時間について~ [Blu-ray]

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オレ人生に許せない映画という枠があるんだけど、この映画はまさにソレ。あまりの怒りにテキストを書き始めたが、映画を観た余韻で感情が収まらない。クソ。クソ。何だ横のクソ映画。世界中がこの映画を評価しようとオレだけは絶対に否定してやる。クソ。

いやまあ稚拙とか志が低いとかだったらまあ別にこうも怒りは湧いてこないわけですよ。許せない映画という枠は、自分があるべきと思う倫理観を逸脱しているから起こるわけでありまして、この映画が感動を呼び込むために使っている演出テクニックは、下手にそれっぽく作品を「なんか良さそう」に見せてるだけに余計タチが悪い。っていうかこの作品に潜む根本的な詐術を理解してなおこんなお涙頂戴映画を創れたのだとしたら、それはとんでもなく厚い面の皮だと思います。

 

ぶっちゃけ全体的にタイムトラベルの扱いは雑ですが、何百回と繰り返したであろう日常のループと、そこからとっくの昔に気づくべき諸問題を、編集でカットしている部分には私なんの異論もございません。観客に気づかせてはいけない傷を演出上のテクニックで見えづらいようにして、作品のテーマを浮かび上がらせることに注力するのは映画として正しい方針だと思います。この作品では、他者の意識の連続性の扱いや元の時間にジャンプすることが可能な点など、そこはもうちょっと明確にしておこうぜ、という点もなくはないですが、ルールの厳密さにこだわるあまりそういった演出にケチをつけるのは、自分からするとちょっと作品を楽しむ余地を削いでしまっているよなあ、と思います。

けどね、問題なのはこの作品のタイムトラベルルールを根本から支える「赤ん坊」理論なワケですよ。過去を変えると些細なことで未来が変わり精子も変わるから赤ちゃんも変わっちゃうので赤ん坊有無かどうかがセーブポイントを作るかどうかの大きな分岐になるってヤツ。確かにそのアイディア自体はなかなか面白いしタイムトラベルものとして「おーそういう視点で展開するのは面白いな」と思わせられるわけです。

でもさ、その赤ん坊こそがこの作品が演出で必死に隠蔽してきた「一回性」と「主人公の責任」を明らかにしちゃってるんだよね。

 

そもそもこの作品、「過去へと遡ることにペナルティがない」タイムトラベルもので、当然些細な失敗をやり直すために主人公は何度も過去に戻る。で、自分の良いように過去を改変しまくるわけだけど、改変してしまった結果として変わってしまった未来を編集で極力見えないようにしている。じゃないと過去を気軽に変えられないから。でまあ、気軽に変わって切り捨てられていくifの世界の想いとかも、同様に注意深くカットされちゃってる。あの話の展開で行くと、ホントなら「あー失敗した今のナシナシはいリセットー」とか主人公は思っちゃってるはずなんだけど、主人公はそのような内面的薄っぺらさをあたかも持っていないかのように描かれているわけだ。

ところが一方、物語はラストに「一回性の毎日が大事だ」なんてクッソ薄っぺらい常識的結論になんとなーく流れで帰結しなければならない。人生は一度きり! だから毎日を大切に生きよう! まあクッソ薄っぺらいけれども物語の結末としては非常にまっとうですね。

でもどうやってその両者を接続するの? ということで要請されたのが、「今のナシナシはいリセットー」の向こう側にあった赤ん坊なワケです。なるほどそうかー赤ん坊の遺伝子情報が変わっちゃったらマズいよねやっぱりリセットとかあんまり良くないんだ! 今日を大事に生きよう!!

 

え? でもちょっと待って! でも今まで君は散々「今のナシナシはいリセットー」し続けてきたよね? 赤ん坊というギミックを使って「過去を変えることで罪のない赤ん坊の人生を変えてしまうのだ!」という責任を生じさせたけど、主人公は今まで散々他人の人生を変えてきたよね? っつーか、本来ならそのまま結婚して幸せに結婚できたかもしれない別の男との出会いを潰して、彼女を自分のものにしたよね? うまく編集で隠蔽されていたけれど、その先にも、主人公が愛した赤ん坊の将来と同じ、彼と彼女の幸せな結婚生活があったかもしれないよね? 身内の変化で過去改変の倫理に気づいたけれども、そこで編集済の未来への想像力を働かせるなら、愛する妻のありえたかもしれないもうひとつの人生にも想いを馳せるべきだよね? もしも赤ん坊でifの世界を作品の俎上にあげるなら、主人公は自分が選んできた未来のエゴイスティックで残酷な側面に、きちんと向き合わなきゃならないはずだよね?

それなのに、なに親子で一回性のある人生を生きるいい話とかでオチつけちゃってんの? あのエンディングだって、どうせ娘が死んだりしたら、容赦なく時間を巻き戻すわけでしょ? っていうか妹が事故で何の傷害もなく復帰できるような「世界に愛された」主人公でありながらなんで父の死を乗り越えたみたいないい話にしちゃってんの? 妹を半身不随にして自分が行ってきた過去の選択の重みに苦悩しろよ! それなしで卓球して海辺走って感動のヒューマンドラマでございやられたって、「コイツ自分の好き勝手に過去を改変して他人を不幸にした上に、その好意にさえ自覚的じゃないクソ野郎ですがこれのどこで感動しろと?」にしかならねーよ!

 

赤ん坊のアレさえなければ、「ああ、そこは演出上問題になるのできちんと排除してありますね。それはそれで一つの正しい作品作りの態度ではないでしょうか。オレは好きじゃないけど」で済んだのになー。

あー、クソ。ホントにクソ。そういう作品の不誠実さは、絶対に許せない。

フォスター卿の建築術

 

フォスター卿の建築術(字幕版)

フォスター卿の建築術(字幕版)

 

ドキュメンタリー映画としてはそんなにドラマティックではないというか、順繰り順繰りにフォスター卿の足跡を辿るみたいな側面が強いのだけれども、その足跡がまあいちいち面白いので見入ってしまう。実際に観たことがあるのは香港国際空港くらいで、確かに「うおースゴイ空港だなあ」と思って見たけど、このルーツが世界の空港を変えたとまでいわれたとは思わなかったなー。

特に印象深いのはドイツの国会議事堂で、クーポラを復活させるかどうかというところでちゃんと歴史へと立ち戻っているのが正しくドイツって国っぽいよなーと思った。国会議事堂自体が東西ドイツの歴史の象徴となってしまうわけで、そりゃまあ否応なしに過去と向き合うことを余儀なくされるよなーと。日本でそういう機能を果たす建築って果たしてあるのかしら?

しかし巨大化した建築事務所が都市設計に視線を向けるのは大変良くわかる話で、それがオイルマネーで現実味を帯びるというのが大変面白い。現在では金融危機のせいで計画が大幅に遅れてるらしいけど、それも含めて本気で行ってみたいですマスダール・シティ。

アップサイドダウン 重力の恋人

 

私散々『サカサマのパテマ 』にブーブー文句垂れておりましたが、この映画でもかなり似たようなことが起こっておりまして、いやというかむしろこっちの映画の方がヤバイ。っていうかそもそもふたつの重力が逆向きに働くという物理をアクションとして見せることがそもそも困難なのだということが大変よくわかり、っていうかむしろ『サカサマのパテマ』は健闘していたのではなかろうか? という気さえしてきます。

まあそもそもルールがクソで、上下の重力は双子惑星の不思議パワーでなんとか決着をつけるとして「燃える」ってなんだ「燃える」ってアホか。適当過ぎんだろ。しかもその適当なルールが恋人同士の時間制限にしか寄与しないって、もう信じられないくらいアホくさい。しかもそのアホくさいルールが主人公たちの新発明によって覆されるとかもうどうでもいい。まじでどうでもいい。っていうか水の混ぜ合わせが新発明とかアホか。下の世界の水って燃えるの? みずがもえるの? ねえ? 物語のために設定を低く設定して容易にねじ曲げるその醜悪さに気づかないなんて救いがないですね。まあヒロインを記憶喪失にしてドラマ作ってテキトーに思い出させてドラマ解消しちゃうくらいだもんなー、もう救いがないよなー。