ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

トライアングル

 

トライアングル(字幕版)

トライアングル(字幕版)

 

あーうんうんいいいい。思いも寄らない方向にストーリーがドンドン転がって宙ぶらりんになったかと思ったらちゃんとひとつ上のレイヤーから解答があって納得できる作りになってる。以下ネタバレなんで作品観てからどうぞ。

 

まあこんないかにもB級な映画をなんで見だしたかっていうと「ループもの」って話を聞いたからで、その前情報がなければ再生しなかっただろうけどやっぱり前情報ない方がいいよなーコレ。ループものとしてのルールや工夫を楽しむ、という作品というよりも、作品の見方そのものがスライドしていくのが楽しい作品だと思うので。

ぶっちゃけ見終わってから冷静に考えると、特に中盤のヒロインのサスペンス要素が結構無意味で、全体の贖罪の意味づけから見たらもうちょっとやりようがあったんじゃないの子ども絡めて? とは思うんだけど、でも見ている途中の「この世界のルールは何だ?」「本当にこの状況に合理的な説明がつけられるのか?」という宙ぶらりん感が大変面白いわけで、それを堪能すべき作品だろうなあ、とは思います。

なんつーか、メタ映画としてメタで観客と戦ってる感じ。で、メタレベルでちゃんと納得の行く回答が示される作品っていうのはなかなかレアなので、うん、よくやった作品だなあ、と思いますはい。

 

スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい

 

まず企画自体が良いよね。ひとりの賞金首をめぐって一癖も二癖もある大量の暗殺者たちが一斉にホテルの屋上を目指す。彼らの思惑が思惑を呼び一種バカバカしくもある惨劇をもたらすってのは、まあ企画自体が大変よろしい。

問題はその暗殺者のキャラ付けをどうするかってところだけど、黒人女性ふたり組とバカ三兄弟がもうキャラ立ちが強すぎてヤバイ。あの二組に目が惹きつけられて、もう他の所に全然意識がいかない。いや、変装の名手とか拷問の人とかいろいろいるけど、でもキャラ付けという意味ではちょっと失敗しているよね。あーそんな人もいたかなあ、くらいの印象で話が進んでしまう。まあでもバカ三兄弟のチェーンソーの死に際が最高なのでオールオッケー。死体しゃべらせるのも最高。最高。

演出も序盤のたたみかける感じは好きで、暗殺者の視点をポンポン飛びながら状況説明するのは適切な混乱をもたらす程度で良い。それに比べて後半は割とオーソドックスというか、やんちゃをしない編集で、ちょっと寂しかったりするけど、でもあのまま最後までやられてたら辛いだろうからそれはそれで成功なんだろうなあ。

ただ、FBIの真相からラストの下りは結構どうでもよく、それがこの映画全体のガッカリ感に繋がってきちゃうよなあ。本当はあのコード抜きに心情がガッと掴まれなきゃならんのだろうけど、うーん、音楽で盛り上げられてもイマイチピンとこない。熱演はしてるんだけど、映画全体がそこに着地する話なのホントに? というのがある。でもラストでみんな生きてたし続編があるのかなあ、とググったらあったんだけど前日譚かよ! あんな思わせぶりに生かす必要あったのかしら……

スピーク

 

スピーク

スピーク

 

POVのホラー。リアルタイムというのは言い過ぎだけどストーリーがほぼ連続していて、映画内の舞台がほぼひとつの建物のみでたぶん半径100メートル以内に収まっちゃうくらいのスケール。いかにも低予算でアイディア勝負のPOV映画って感じ。

なんだけど、アイディアの部分でだいぶ負けちゃってるからなあ。心霊現象のドキュメンタリーって時点でストレートすぎてどーなのと思うし、対立軸のある人間関係も序盤はともかく中盤以降全然効いてない。舞台設定は変化に乏しく、どんどんと恐怖の度合いが高まっていく感じは少なくとも自分にはない。カメラは恐怖シーンでがちゃがちゃと動き何が起こっているのかわかりづらく、しかも大量にCGをブチ込んで次から次へと超常現象のオンパレードが繰り広げられて怖くもなんともない。アトラクションじゃねーんだからさ。ラストもちょっと捻りの利いたことをやったつもりなのかもしれないけど、演出がマズくてわかりづらい上にチープでなあ。

観るべき所は、うーん、映像が向こう側の世界の画を差し込んでくるところとか? いやー、でもそこはこの100万倍巧みな格好で白石監督がやってるからなあ。

薔薇十字叢書 ヴァルプルギスの火祭

 

薔薇十字叢書  ヴァルプルギスの火祭 (講談社ラノベ文庫)

薔薇十字叢書 ヴァルプルギスの火祭 (講談社ラノベ文庫)

 

なんだオレ三門鉄狼じつは4冊も読んでるのか。今まで散々な感想しか書いてないのに。なんで読むのか。好きなのか。いやいやそんな。まさか。まさかまさか。

といいつつも読み始めたのはもちろん「京極堂」が出てくると聞いたからで、どうやらこの作品京極夏彦トリビュートらしい。京極堂の孫たちが登場し活躍するラノベらしい。マジか。マジでか。マジでそんな蛮勇を。

と思いつつ読み始め「あー蛮勇だったなあ」と読み終わった。いやまあこういう蛮勇はそもそも嫌いじゃないしチャレンジは必要だと思うし結構自覚的にこの道具立てを選んだみたいだからそれ自体は悪くないと思う。ただまあトリビュートとして描くには圧倒的に書けてない、というか元の京極堂シリーズがすごすぎて、そのガワやら雰囲気やらの一部を取り込もうとしても、まあどこかに歪みが出ちゃうよね、という感じがする。

この作品においてはたぶん館の存在感とその中心点として機能するべきキャラクターがいかに異界を創りあげているか、そこに説得力を持たせることができなければこのスーパーバカバカしい謎は成立せず、もうちょっと恐れずに全力で京極堂しなければならなかったんじゃないかなあ。みっしり。それには圧倒的に分量が足りないならばやっぱりそもそもの問題設定が間違っているとしか。

あとはキャラが薄いのも残念。そこら辺、原典を元にしたキャラクターだから省略している、ってのもかなりあるとは思うんだけど、如何せん原作の二番煎じでキャラが薄くなってるようにしか思えないよね。つくりとしては厳しいなあ。

しかしラストの本家京極堂登場シーンはもうちょっとどうにかならんものか。推理のひっくり返し方の根拠があまりに貧弱すぎるよ。あそこでちゃんと全員がひっくり返るような説得力を持たせられないんじゃ、トリビュートとしても失敗なんじゃないかなあ。ひっくり返された推理の中にも何らかの意味を見いだして主人公が肯定する、くらいまではいって欲しいものですはい。

ギフト

 

ギフト(字幕版)

ギフト(字幕版)

 

うーん良い良い。サム・ライミ堪能。冒頭の湖面を滑る映像だけでもう「サム・ライミきた!!」って感じ。

ホラーに見せかけて話のつくりはミステリなんだけど、そうやって考えるとかなりつくりは雑。そもそも容疑者が少ないのももちろんあるんだけど、女が亡くなったらまず真っ先に疑われるのが恋人なのは当然なワケで、多少ミステリを読んだことあるひとならまあ大体つくりがわかるよね。むしろストーリーはいかに婚約者に疑いの目を向けさせないか、ってことだけをやり続けていて、そういう視点で見るときちんと演出してあるなあ、と逆に感心する話ではあります。でもヒントを出し過ぎだよね。「実はあいつが死んでホッとしている」とかそこまでキアヌ妻に言わせる必要はあったのだろうか?

なんて結構危ういつくりをしていながらも、最後に「あー面白かった」と思えるのは、単なるミスリードかとおもった事象がちゃんとヒロインの能力&救済に結びついているから。ってかさ、「幻かと思ったけれども私の手元には彼から受け取った○○が……」ってベタベタなヤツがこんなにも有効に機能するなんて思わなかった。そういう超常現象の扱いも含めて、いやあ巧みにコントロールされてますねって感じ。

鉄男

 

鉄男 ニューHDマスター

鉄男 ニューHDマスター

 

『鉄男 THE BULLET MAN』はなんか観たことがあってなんだかよくわかんねーなーとおもった。塚本監督って色んなところでリスペクトを受けてるっぽいし、近頃だと『沈黙』でのスコセッシのやり取りとかを聞いたけど、でもその偉大さがイマイチよくわかんないんだよなー。『野火』ホントにオレダメだったもんなあ。

なんて思いながら見た『鉄男』だけど、んーなるほどなるほどこれは確かに当時いきなり観たら衝撃だったかもしれない、と思う。なんというか、この内容を語るならこの映像以外にはないだろうなあと思うくらい、後半のとんでもないストーリー展開と映像表現がマッチしていて、音楽もまあかなり癖になるデキで、うんうんこれはちょっと圧倒されちゃうよね。

あとモノクロで日本の工場を撮るとカッコいい! というのも大変よい。偏執的なほど画面に映るパイプが、実は気づいていないオレらの日常の味方を教えてくれる感じ。観たことのある風景と地続きだからこそ、映像からこういう奇妙な恐ろしさを感じるのかしらねえ、と思った。

パブリック・エネミーズ

 

パブリック・エネミーズ (吹替版)
 

最近だと「野火」でもそうだったんだけど、カメラに好き嫌いが出てしまったのは本当にどうにかならんのだろうか。この映画も映像がほんと見てられないもん。クッソ工夫のない手持ちカメラの肩越しの切り返しショットで無駄な会話を聞かされることの何と辛いことか。もっとヒキの絵をくれ!! とりあえず手持ちのカメラで登場人物の後を追いかけて会話へイン、だからこの画角でしょーがないよね、じゃないんだよ!! デジタル撮影とかもあるのだろうけども、基本的には動画の流れの中できちんと見せるべき所を見せるための工夫や時間が圧倒的に不足してるってことだよねコレ。じゃなきゃ表情が重要な場面であんなクッソくらいライティング採用しないでしょ。あのダンスシーンの被写界深度や光のコントロールの無さによって生じる圧倒的な台無し感にオレはオレはオレは憤死するかと思った。もうね、拷問のような143分。こういう絵作りの違和感をとりあえず棚に上げてその他の要素に集中できる心の棚を設けたいものだぜ……

とか言いつつも、映像が良かったら映画を楽しめたかというと全然そうも思えないのでなんともなー。豪華主演の共演のはずが、クリスチャン・ベールの扱いがきつすぎでしょう。っつーか、ジョニー・デップと檻越しに向き合うあのシーン! この映画で一番シンボリックな箇所になってもおかしくないのに、あんな再現ドラマライクの画像でテキトーに思わせぶりな会話挟まれても、これっぽっちも面白くねーわ! って、漏れ出すのは結局映像に関する文句だよなー、はぁ……