ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

オール・ザ・キングスメン

 

ひとりの純粋な人間が政治の世界に飛び込み権力欲に取り憑かれていく様子を描く、というのはまあわかるんだけど、主人公は物語の中心からちょっとだけ離れたところにいて、関与しつつも展開を観察する、という位置にいるのは果たしてどうなのか。それは共感の予知を残すために必然だったのかもしれないけれども、だったら政治家が権力欲に取り憑かれていく変化を間近で見ているのを、追体験できるようにきちんと描かなきゃならんのではないかなあ。肝心要の変化がダイジェストで描かれるもんだから、そこで物語への興味が大きく削がれてしまっている気がしてならない。あのデカい顔ポスターが街に貼られているのは、見ていて単に気持ち悪いだけだもんなあ。

トーリー展開もなんだかうまく構成されているようには感じられず、ヒロインの不倫の下りとかは結構どうでも良いよなあ。ラストもうまく着地点を見つけることができずに、結局暗殺でとどめを刺しました! って感じ。いやあ、民衆の支持を失いそっぽを向かれるのではなく、単なる人間関係のいざこざで殺されちゃうのって、全然勧善懲悪って感じがしないし、根本的に間違っていると思うんだけどなあ……

ボビー・フィッシャー 世界と戦った男

 

『完全なるチェス』を読んでアウトラインは知っていたので、内容と言うよりはむしろ映像としてのボビー・フィッシャーを堪能した感じである。アイスランドでの下りのジリジリ感とかは、文字面で読んだときとは全然印象が違って感じられた。まあ全体的に、幼少期のアレやコレやに触れる余裕がないから、ボビー・フィッシャーへの共感が低くて、客観的に「チェスにのめり込む中で精神のバランスを崩した面倒な人」って理解に近づいちゃうよなあ。

それにしても視点が冷たいなあと感じるところはあって、カスパロフの無残な切り捨てとか勘弁してあげてよー、晩年の知り合いの冷たい別れとかもういいじゃんかよー、と観ていて大変辛くなる。関係者にインタビュー撮ってたらそれもしょうがなかったのかなあ。実際それが事実なんだろうしなあ。でも普通は人間的な側面とか一部には残して、共感できる余地を残しておくものじゃないかなあとは思うんだけど。うーん、うーん。

世界チャンピオンになることと比較できるものなんて彼の人生にはなかったのだ、というような解釈をすれば、まあそうなのかもしれないけどさ。そういう意味では「世界と闘った男」「AGAINST THE WORLD」ってのはすごいタイトルだなーと思う。

MONUMENT あるいは自分自身の怪物

 

いちおーWiz小説の系譜も含んでるんだろうけどオレは詳しくないのでどれだけ上手く書けているのかはよくわからん。自分の感覚でいうとこれはキャラクターと衒学趣味のストーリーになっていてダンジョンそのものが持つ禍々しさとか求心力とかがうまく描かれているようには思えず、本当にそういう作品で良いのかしら、という疑問がある。ラストで広げる大ネタは大変気持ち良いいんだが、しかしこの大風呂敷はこのダンジョンそのものが持つ求心力があればこそ広げられるんではないのかなあ。1999と結ぶ辺りとか魔法で世界史が変わるかとか、そういう大変面白い思考実験、もうちょっと生きる枠組みにできたんじゃないのかなあ。

いや、物語の根本を支える屋台骨が主人公であるのは全然間違っていないと思うんだけどね。でもこの主人公が特別に魅力的かっていうとそういうわけではなし、かといって他のキャラクターにも求心力があるかと言えばやっぱり距離を置いた描き方で……ストーリーも、この枠組みならもっとワケのわからん、でも底が抜けているような闇の真相にブン回される感じを描くべきだと思うんだけど、構成が妙に理知的で、でも肝心の「もうひとりの自分」の確信を抱くところの説得力のなさとかが、どうもストーリーへの興味を失わせてしまうんだよなあ。

 

スキャナーズ

 

あれ? どうしょうもないB級ホラーかと思ってたら、なんかコレやけに緊張感があって面白いぞ! って確かめたらクローネンバーグってアレか、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の監督か。あの映画もストーリーが巧みだったけど、それ以前に画面に謎の緊張感あったもんなあ。

超能力者のホラーってたくさんあるけれど、この映画の異能の見せ方はちょっと普通と違うよね。SFXはもちろん良くできているんだけどその使い方は抑制されていて、突然度肝を抜く頭がパーン! とか血管浮き出る気持ち悪い効果とか、ちょっと気の利いたものを超効果的なポイントで投入していく感じ。普通のところでは基本的に役者の芝居と音楽だけで見せるというある意味省エネスタイルなんだけれども、これが成立してしまうのは本当に演出の妙だよなあ。

あとこの時代のハッキング描写が面白い。デジタルに対しての理解がない時代にどうやって超能力電脳戦を見せるかは、かなり頭を悩ませるところだったと思うんだけど、基板をマクロレンズでたっぷり見せてクリアするとは思わなかった。その結果、過剰な影響が物理的に出るのも大変説得力がありました。

駅馬車

 

駅馬車 HDリマスター[Blu-ray]

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おもしろーい!

映画の教科書的な本なんかにも当然出てくるこの作品、馬車での追いかけっこが本当に素晴らしくできている。カーレースのほうが実際の速度が出ていようがなんだろうが、重要なのはそこで活劇する人間がどれだけの危険に身をさらしているかという点で、だから駅馬車の追いかけっこは今観ても全然色褪せない。あとなにより「馬が走る」映像は、理屈抜きに観ている者に訴えかけるよなあ。

でもこの映画の追いかけっこの素晴らしさは、単純な活劇の面白さだけではなくて、むしろそこに挿入される馬車内での人間関係との対比があるからこそなのかもしれない。アパッチとの対立は想像よりも少ない、というかむしろジリジリと緊張感を高めていくタイプのつくりになっていて、前半から中盤にかけてはそんな状況の中でそれぞれの乗客がどう行動するか、が話のメインなのよね。そういう視点から考えると、最初はあれやこれやでかなーり険悪な雰囲気の馬車内が、妊婦の出産という一大イベントを経て一丸となるというのがいやはや素晴らしく効いているわけで、いやほんとすごい脚本だよこれは。色々な人間の対立が、新たな生命の誕生で無条件に解消してしまうんだから、これをマジックと言わずしてなんと言おうか。

それにしても婦人会に迫害される下りの感じがよくわかんなくて「???」って感じだったなあ。あれ、たぶん娼婦で良いんだよね?

オースティン・パワーズ ゴールドメンバー

 

『デラックス』は確か前に観たはずなんで未見の『ゴールドメンバー』を。

いやーやっぱりコレ前提知識があるとないとでは全然理解度違うよなあ。去年007を大量に観ておいて良かった良かった。途中で挟まる日本のトンデモ感だって、前提として本家の日本描写を観ておかなければどう捉えていたかわからん。随所に溢れるパロディを優しい気持ちで観ていられる。しかし金粉が足りないのは解せない。なんでだ。

にしてもとにかくゲストが豪華で、OPから『ミッション・インポッシブル』をパクってるのは笑ったけどトム・クルーズが出てきて大爆笑だよ。いやほんと、トム・クルーズは自分の見え方を理解してるよなあ。でもそれだけに止まらず、ケヴィン・スペイシーとかスピルバーグとか、ビッグネームが「は?」って役で出てきて、にわかには映像が信じられないのだった。いやはや、そんな作中作みたいなつくりをしておいて、中身はハリウッドとこれっぽっちも関係なく、ラストで申し訳のようにトラボルタ出してそれっぽく締めるそのとってつけた感、全然嫌いじゃないです。どーでもいい真相や全く続きが気にならないヒキの構図とか、そういうのを含めてオースティン・パワーズなんだろうなあ。

にしてもマイク・マイヤーズがんばりすぎ。この人どんだけ役柄演じるんだ。

キャノンボール

 

キャノンボール デジタル・リマスター版 [DVD]

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『テレクラキャノンボール』を楽しんだからには一応こっちも観ておくかーと軽い気持ちで見てみたんだけど、いやはやとにかく眠い眠い。たぶん天一を食って腹一杯だったのが原因だと思うんだけど、いやーそれにしたってちょっと内容がションボリ過ぎませんかね。いやまあ今の基準で観たらいかんとかそういうのはあるかもしんないけど、にしたって会話はほとんどどーしょーもないしキャラもメインの救急車以外はイマイチだしレースはなかなか始まんねーし始まったら始まったであんまり工夫がねーし、オレの忍耐にも限度がある! いや「デス・レース2000」とかの方がまだ観れたかなーという感じ。

ゴールデンハーベストのロゴがドンドンドンドンファファファファーって来てただでさえテンション上がってるところにすげえイカしたオープニング、さらにたたみかけるようにあのスーパー豪華キャストが並んで「マジで!? 何コレ!? ホントにこんな映画あんの!?」とときめいた僕のハートはどこに行ってしまったのでしょう。っていうかなんなんだよあのジャッキーとボンドの扱いは。当時だってさすがにこういう使い方されたら「えーっ!?」ってなったんじゃないのコレ?