ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

モンスターズ / 地球外生命体

 

モンスターズ / 地球外生命体 [Blu-ray]

モンスターズ / 地球外生命体 [Blu-ray]

 

怪獣映画、でありながらも身の丈に合わせた演出でロードムービーをやっていて、その演出プランが大変良い。怪獣の姿はタコだし期待値上げてもしょーがないので、冒頭でいきなりガツンと見せちゃうけれども、怪獣のいる世界の日常の細部を巧みに描きながら、視点者のふたりがモンスターに出会うまでを引っ張って引っ張って引っ張って見せるのは最高に良い。怪獣そのものより、視点者が怪獣にどのような反応を見せるのか、の方に興味があることもあるんだなあ……と感心しました。「志村、うしろうしろー!」的な。あー、視点と言えばこの監督の『GODZILLA』も、かなり視点にこだわった映画だったよなあ。

あとストーリーもポイントポイントがとても良くて、港の一晩の描き方が白眉。物語において決定的な転換点になるあの瞬間を、よくもまああんなに巧みに描けたもんだなあ。ラストのまとめ方はどーなのよ、泣けるほど美しい感じには撮れてないと思うよ、とかいうのはあるものの、いやはや、素晴らしい映画でございました。

 

でもさー、これPOVっぽい作品だよねー主人公もカメラマンだしさー、と思ったらWikipediaにはその旨が記載されていた。うんやっぱりそうだよね最近よく見てるからだけじゃないよね。この視点で物語を描くなら、POVってバッチリ填まりそうな感じがするし、だから逆に「なぜPOVではなくなったのか」ってのが不思議だったんだけど、 http://archive.fo/uDOSb あー、『クローバーフィールド』の影響なのか。あれだけ強烈な作品が出てしまうと、さすがにねぇ……

僕は彼女を攻略できない。 まちがいだらけの主人公ライフ

 

増えてんなーという印象の強いメタラノベ。このジャンルは理不尽設定を押しつけられた主人公がどう振る舞うか、というのが基本的なセンになることが多いけど、その理不尽設定の扱い方って実は結構ナイーブだと思ってる。理不尽設定には理不尽設定なりのルールが必要で、読者に了解をとらずに「作者の都合」で物語を進めるなら、そりゃまあ何でもできるよね、という話。作者の手のひらの上でルールがコロコロ変更されるとして、そこで真剣にキャラクターの行動に感情移入ってできる? オレは無理だなあ。

「ハーレム」という言葉の多義性から物語を転がすこのメタラノベは、ある意味でそういうルールの扱いに対してきちんと向き合っているので、安心してみられる……のかなーと思いきや、後半の展開で考えを改める。

周囲の人間が巻き込まれるメタきっかけの障害が書き割りで終わってしまうのは、まあある種のギャグとして処理できるかもしれないけど、ラストでハーレム主人公がハーレムを成立させるための障害の超え方が、主人公の心意気ひとつでオッケー本気出せば世界から祝福されるってどーなのよ。「心意気ひとつでハーレムが成立してしまう特徴なし主人公」がハーレム物として正しいと考えてそれに沿ったというなら、自分はそういうジャンルに「全然面白味を感じない」と答えるしかないなあ。形式から導き出された結論に到る前に、もっとキャラクターに感情移入するエンタメをしてもいいじゃん? と思う。

 

でまあ、作者の過去作見たら、あー『集団美少女戦士キューティー・パンツァー』の人じゃねーか! 言われてみれば確かに納得。あの作品も、形式から導き出された妙なドライブ感が合ったけど、ラストで上げたハードルを「いやそれ超える必要あんの?」って普通の結論に最短距離でゴーしてた気がする。

ソシャゲライター クオリアちゃん -恋とシナリオと報酬を-

 

 

ソシャゲは好きですか? ぼくはあんまりやってません。

anond.hatelabo.jp

っつーことで、増田で触れられていたので読んでみた。

 

あー、憐れだなあ。憐れ。本当に憐れ。憐れとしか思わない。

 

いや、まず根本的につまんないんですよこれ。ああそう、ここをこうしてこうしてこうしたいのね? あーそうプロット通りに書いたのね? で? だから何? って感じ。熱い話? いや、まあ、熱い話にしたいんでしょうね。その作意はきついほどに透けて見えるよ。でも、作意が見えるのと、実際に熱いと感じるかは別だよね? だから巻末の推薦文も「熱い!」としか書けないんじゃないの? 

 

togetter.com

 でね、思うのはね、ソシャゲでそんなに箔がついているライターが書いてコレなのかってことで。これで面白い作品だと思ってるのか。売れないのは作品のせいではなくて売れるための方策の欠如だと思っちゃってるのか。マジか。正気か。アマゾンレビューとかも変な感じだし、誰かちゃんと言ってあげた方がいいよ。この作品、普通に詰まんないよ。ほんとに。

 

 

さておき。

作品の最後に描かれるんだけど、読者を喜ばせることよりも、クライアントに評価されることの方が価値ある報酬として機能してるのね。シナリオへの対価がアップすることがわかりやすい目的になっちゃってる。いいよね数値化される評価って。彼らたぶん、ユーザーにどのようなゲーム体験でシナリオが届くかとかにはあまり興味なくて、重要なのはソシャゲ製作ってルールの中でどれだけ有用な駒になるかってことで、それ以外の価値観は重視されてなくて、作品単体の面白さとか基本問題にならないの。びっくりするくらいどうでもいいの。

例えば、主人公がヒロインに啖呵を切って「自分一人でシナリオを完成させる!」って誓った最後の山場で、でも結局締切に間に合いそうにないときに、ヒロインに頼っちゃうのね。アレだけ必死に願掛けしたのに、あっさりそれを翻しちゃう。それがなんでかというと、この作品の世界では「締切を守ること」が絶対条件なの。曲がんないの。「クライアントに泣きついて、締切を延ばしてもらって、それでも作品のクオリティを上げる」とかは想像力の範疇を超えるの。そこまでして良い作品を追求することはありえないの。時間を戻すなんて超常現象を持ち込んでも、守らなければならないの。不可侵なの、締切。

 

「ルールに適応してやれるだけのことをやること」と、「面白い作品をユーザーに届けること」の間の距離が、絶望的に、広い。

でも、作品の中で、その距離は問題にすらされていない。

 

シナリオライターが普通に持っている技能を臆面もなく「超能力」として描いて、突然繰り出されるキャラクター大喜利に反射神経で答えることを最適解にして、ギリギリで提出したシナリオのデキを主人公たちは肯定して、それが世界に祝福されてるんだもん。そういう価値観を善として作品全体が描かれてるんだもん。実績のあるソシャゲライターがソシャゲライターのあるべき姿として記してるんだもん。

作品の善し悪し以前に、もうね、憐れすぎるよ。コレを信じて作品を書いている人がいるのなら、オレはもう何も言えないよ。ただただ憐れみの視線を送るだけだよ。それだけしかできないよ。

 

いやさ、こんな仕事するくらいだったら、主人公は真面目に勉強して公務員なってクオリアちゃんを食わせてあげなよ、マジで。

イギリス近代史講義

 

イギリス近代史講義 (講談社現代新書)

イギリス近代史講義 (講談社現代新書)

 

言い方がどこもかしこも留保に満ちていて、いやまあそれは確かに学問上は正しい態度なのかもしれないけれども、読んでいる方としてはもう少しなんかこうはっきりとしたことが聞きたいなあ、とか思ってしまう本だった。優しい説明で色んな説を取り上げられても、その面白さの滋味はやっぱ専門家じゃないとわかんないんじゃないかなあ。

内容はあっちに行ったりこっちに行ったりで、いやまあしかしそれも面白いんだからそれはそれでいいのかしら。しかし栄光と衰退の歴史を現代の日本から見ることで……みたいな冒頭の感じとはずいぶん違った場所に着地したような感じはします。いやまあ面白いんだけど。

近代史という括りで産業革命前後の流れを描いているのだけれども、うーん、やっぱりジェントリってのがイマイチ良く理解できてないんだよなあ。イギリスの本を読むときはそこら辺の感覚をもう少しきちんと身につけた方がいい気がする。

しかし暦の話とか中国との対比とか、今まで色んな世界本で見かけた知識が繋がっていくのは快感である。

ある優しき殺人者の記録

 

全編長回しだけど、いやーよく考えられてるよなあ。導入のスムーズさはまあ本当に素晴らしく、殺人者のバックグラウンドをポスター一発で示したり、あのマンションまでの道のりを電話で乗り切ったり、いやあさすが撮り慣れているなあという感じ。いや、POVと長回しは相性は良いけれどもここまで極端な作品はあまり見ないので、むしろ撮り慣れてないとできないんだろうなあこういう作品は。

ベースはマンションの上昇と共に展開していくお話で、舞台転換の困難さを意外な登場人物で補っていくのも大変良くできている。まあ日本人カップルのキャラづけがちょっと極端すぎて笑ってしまったけど、アレがないと物語を転がせないからなあ。逆に今振り返るとよくアレだけの内容でこの尺を保たせたなーと感心する。

クライマックスで天に通じてから「カメラ視点で」物語が連続していくという大変トリッキーな展開は、しかし物語の詐術にまんまと引っかかって全然不自然に感じない。「記録」がなぜ世界線を超えられるのか、みたいな所に物語的なフォローが用意されていなくても、ラストでしょうがないかーと飲み込めるマジックがあるよなあ。

こういう視点で語り口が用意できるってのは、やっぱりこのジャンルについて深く思索しているからだと思う。作品の善し悪しはとりあえず置いておいても、感心。

恋愛適齢期

 

恋愛適齢期(字幕版)

恋愛適齢期(字幕版)

 

ジャック・ニコルソンの映画はジャック・ニコルソンの印象が強すぎて、いやまあさすがに『シャイニング』とか『ディパーテッド』とか『チャイナタウン』とかは傑作だったなあという印象と共に覚えてるんだけど、現代の日常の老年の映画ってあんまり印象がなく、この映画も『恋愛小説家』とかと混じってどの映画を観たのか全然わかんないまま見逃してた。おばちゃんと一緒にプールに入るのってなんだっけ?

それにしてもまあ傑作ですね。普通に面白くてビックリしてしまった。特にヒロイン側が「劇作家」というのが効いていて、後半のメタっぽい展開にも少し関わっているんだけれども、全体的に「気の利いた台詞」の応酬なのが素晴らしい。立ち位置がこれ以上ないくらい明確なこともあって、ひとつひとつの台詞に手に汗握る。発作前の姉妹会話の生っぽさは最高だし、前半の恋愛パートはこの強度の台詞がなければ成立しないし、タクシー前で呼び止めるシーンの台詞の無様さが本当に見事。

あとはなー、ジャック・ニコルソンの喜劇俳優としての腕が最高にいいよなあ。キアヌからの尻丸出しシーンが最高過ぎて、いやーほんとにズルいよなあ。ベッドからずり落ちるだけでこんなに面白いんだもんなあ。

パリのシーンでの復縁はさすがにちょっと説得力が足りない感じもしましたが、全体を通してとても良い映画でした。

48時間

 

48時間 (字幕版)

48時間 (字幕版)

 

この組み合わせだと囚人がもっとトラブルメーカーになってしまうのが普通だと思うんだけど、むしろ刑事側がトラブルガンガン起こしていくのは大変面白い。私生活も含めて、刑事のキャラが大変立っていていいよなあ。

がしかし、全体がうまく構築されてるかというとそういう感じはあんまりしない。ってかそもそも『48時間』ってタイトルにした効果が全然なくて、タイムリミットがいつだからどうとかいう話に全然なってないのはどーなのよそれ? 『24』の見すぎ? いやオレ見てないけど。あとBGMが抑えめなのはなんでなんだろう。変にリアリスティックな表現してもしょうがないし、ガンガン劇伴入れて雰囲気で進めていかないのはちょっとたるい感じもする。

地下鉄駅での銃撃戦は、群衆を入れてとてもよかったなあ。ラストのチャイナ・タウンのやりとりも、ベタだけど大変見応えがあって良かった。でもバスでのカーチェイスは何だったの? ってかなんでバス? どっから調達したのアレ?

なんか色々ばらばらっとした印象の作品だけど、ラストシーンのやり取りの気の効き方でもうみんなオッケーな感じもしてしまう。あんな気の利いたラストのやり取りは、今まで観たことがあったかなあ……本当に素晴らしいやり取りでした。